コラム

2023/05/31

レーザー発振の原理を解説!覚えておきたいレーザー発振器の種類や特性も紹介

レーザー発振の原理を解説!覚えておきたいレーザー発振器の種類や特性も紹介

レーザーは、現代の科学技術において欠かせない存在です。その中でも、レーザー発振器はレーザー技術の中で最も基本的な装置の1つであり、レーザーの性能を決定する重要な役割を担っています。

本記事では、レーザー発振の原理に加えて、レーザー発振器の種類や特性についても解説します。レーザー技術に興味のある方、そしてレーザー発振器について深く理解したい方にとっての参考になれば幸いです。

1.レーザー発振って何?しくみと発振を促す要因

反転分布状態における光の自然放出により、別の電子から誘導放出が引き起こされ、光の数は連鎖的に増加し、最終的に強力な光の発生を導きます。この現象がレーザー発振のメカニズムとなります。

1)レーザー発振における光放出過程の解説

レーザー発振は、光が刺激を受けることによって光波を発生させるプロセスで、自然放出と誘導放出の両方に依存します。レーザー発振では、自然放出と誘導放出を繰り返すことによって光波が増幅され、光の出力パワーが高まります。レーザー発振で放出される光は、位相と進行方向がそろっているため、強い光を作ることが可能です。

2)レーザー発振条件の最適化

レーザーの発振条件の最適化に関する研究は、今日においても重要性を持ち続けています。半導体レーザーを含む多くのレーザーは、反射鏡の間にある活性媒質で誘起放出された光による増幅が発振の条件となっています。この増幅の条件を達成することは、高効率のレーザー出力を得る上で不可欠です。

最適な発振条件を実現するためには、媒質の吸収係数や利得係数、反射率などのパラメーターが重要な役割を担います。これらのパラメーターは、レーザー出力の最適化に向けて、より精密な制御が必要です。例えば、反射鏡の反射率を調整することにより、発振効率を最大化できます。また、半導体レーザーでは、発振波長やストライプ形状の最適化などが、レーザー出力の改善につながります。

現在では、コンピューターシミュレーションや光ファイバー技術の進歩などが、レーザー発振条件の最適化に大きな貢献をしています。さらに、AI技術の導入により、発振条件の最適化がより効率的かつ精密に行えるようになることが期待されています。最適なレーザー発振条件の実現に向けて、今後も研究や技術の発展が求められるでしょう。

3)レーザー発振のための温度管理と放熱技術

レーザー発振を効率よく行うためには、レーザーの温度とエネルギーを一定に保つことが重要です。レーザー発振器は、温度変化に非常に敏感であり、温度管理が不適切だとレーザー出力が低下し、機器の稼働も鈍化する可能性があります。また発振器の寿命にも影響を及ぼし、機器の耐用年数を左右することにもなります。発振器をレーザー加工機などに組み込んだ場合も、環境温度を管理することが、機器全体の耐久性を高めるためにも欠かせない対策となります。

例えば、一般的なレーザー加工機の適切な環境温度は+15℃から+25℃の間であり、相対湿度は40%から70%となります。この範囲内での温度管理が重要ですが、特に寒い季節には注意が必要です。

また、放熱技術も重要です。レーザー加工機など、発振器を組み込んだ装置は、レーザー発振器から発せられる高熱を吸収することが多く、機器内部の温度上昇を招きます。そのため、放熱装置によって熱を逃すことが必要となります。放熱技術には様々な方法がありますが、代表的なものには冷却ファンや冷却水を用いる方法が挙げられます。放熱装置を設置することで、機器内部の温度を一定に保つことができ、安定性を高めることが可能になります。

2.種類別に解説!レーザー発振器の仕組み

レーザーを発生させる装置をレーザー発振器といい、「レーザー媒体・励起(れいき)源・光共振器(ミラー)」で構成されています。

光ビームの生成は、まず励起源によってレーザー媒体のエネルギー状態が励起されます。励起されたレーザー媒体は光子の形でそのエネルギーを放出し、誘導放出が発生します。放射光は、光共振器を繰り返し通過することで、位相の揃った強度の高い光ビームになります。

レーザー発振器の光出力の方式には、連続(CW)発振とパルス発振があります。連続発振では、光ビームが連続的に出力されます。パルス発振は、あらかじめ決められた周波数やパルス幅で、断続的または周期的に光ビームを出力する仕組みです。

1)半導体レーザー発振器の原理と特徴

半導体レーザーとは、半導体を素材としてつくられた回路素子です。電流を流すことでレーザーを発生させることができ、レーザーダイオードとも呼ばれています。

半導体レーザーは、活性化した半導体層の境界に電流を流すことで光を発生するレーザーです。このレーザーは、活性化層の反射面にレーザー結晶の劈開(へいかい)面を使用することが特徴的であり、非常にきれいな反射ミラーとして利用できます。半導体レーザーはPN接合の結果ですが、必ずしもPN接合に限られず、他の基板の上に成膜されたパターニングされた半導体としても作ることができます。

また半導体レーザーは、電力消費が低く、小型・軽量であるため、様々な用途に応用が可能です。低コストかつ小型であるため、多くの産業分野で使用されており、半導体レーザーは光通信や光学記録装置、照明用途、大出力レーザーのシーダーなどに幅広く使用されています。

2)固体レーザー発振器の原理と種類

固体レーザーとは、結晶体や鉱石などの固体媒質を使って光を増幅するレーザーの1種です。固体レーザー発振器の原理は、外部から励起光を照射し、結晶や鉱石中に存在する発光原子などの励起された原子が誘導放出を起こすことでレーザー光を発生させます。

固体レーザーの中でも代表的な種類としては、YAGレーザー、チタンサファイアレーザーなどがあります。それぞれのレーザーの特性や用途に合わせて励起源やミラー構造、レーザー媒質などを設計し、レーザー効率や出力などを最適化することが発振器の設計の重要なポイントとなります。

高出力化が容易で安定性に優れているため、加工用途や医療用途といった産業分野から、最先端の理科学研究まで広く利用されています。

3)ファイバーレーザーの発振の仕組み

ファイバーレーザーとは、増幅媒体として希土類元素をドープ(少量の不純物を添加)したダブルクラッドファイバーを用いた固体レーザーの一種です。

ファイバーの両端には、出力側に低反射、入射側に高反射率の各ミラーを設置しています。励起光は第1クラッドに入射し、第2クラッドとの境界で反射されながら伝搬することで、コアにドープされた希土類元素に吸収されます。この吸収により基底準位と準安定準位間に反転分布が生じ、光が放出されます。そして、2つのミラー間で反射を繰り返すことで光が増幅され、レーザー発振が生じます。

ファイバーレーザーは、ファイバーの全反射を利用して、細いファイバー内に光を閉じ込めます。その結果、レーザー結晶を使用した固体レーザーに比べ、エネルギー変換効率が高いという特徴がありえられます。

また、ファイバーは細く、表面積が大きいため冷却が容易であり、高出力化が可能です。さらに、ファイバーと光部品を一体化できるため光軸にずれがなく、安定して信頼性が高く保守性に優れています。さらにファイバー出力によって高いビーム品質が保持されることも挙げられます。

4)気体レーザー発振器の原理と種類

気体レーザーは、ガスを媒質として使用し光を増幅させるレーザーの一種で、ガスレーザーとも呼ばれます。気体レーザーの種類には多くの種類がありますが、CO2レーザーやHe-Neレーザーなどが代表的なものです。CO2レーザーは主に工業用途に用いられ、He-Neレーザーはレーザー測距などの科学実験や光装置の補正、測定器のガイド光に使用されます。

気体レーザーは、内部のガス分子を励起することで発光します。この励起には、電極間に高電圧を印加する方法や、光を照射することで行われる方法があります。気体レーザーは単色性が高く、大きなレーザー出力が得られるため、様々な分野で応用可能です。

3.レーザー発振に関する用語や特性

ここでは、レーザー発振に関する用語などをかんたんに説明します。

1)レーザー発振に必要なコンポーネント

レーザー発振器は、「レーザー媒質、励起源、光共振器(ミラー)」で構成されています。

レーザー媒質・媒体励起源の光を吸収し、光子を放出する元素を含有した物質
励起源レーザー媒質にエネルギーを与えるための光源
光共振器(ミラー)特定の波長の光を反射するミラーで囲み共振させる装置

2)パルス発振と連続発振

レーザー発振は、大きく分けて「パルス発振」と「連続発振」の2つに分けられます。これらの動作モードは、レーザーの出力特性や用途によって使い分けられます。

連続発振は、名前の通り連続して一定出力の光を出力する方式です。連続発振レーザーは、常に光を出力し続けることが必要な、光通信や光ファイバー通信、レーザー加工機や医療機器などの産業用途に使われます。

一方、パルス発振は極めて短時間のパルス状の出力を繰り返し発振する方式です。パルスレーザーは、医療や科学、軍事衛星通信や素材加工に利用されます。例えば、パルスレーザーを使用することで、素材表面を微細加工することが可能で、ナノテクノロジーの発展にも寄与しています。また医療・美容分野で、パルスレーザーを使って肝斑やタトゥーの除去が行われることもあります。

3)レーザー発振の特性

レーザー光は、一般的な光と比較して、3つの主要な特性を持っています。これらの特性は、指向性、単色性、可干渉性(コヒーレンス)です。

まず、指向性は、レーザー光が、一定の方向に位相の揃った状態で進むことを指します。レーザー光は、光の波を一直線に打ち出すため、広がりにくく、遠くまで届きます。この性質は、レーザー光が、航空機や宇宙船の通信システムで使用される理由の1つです。

次に、単色性は、レーザー光が単一の波長を持つことを指します。これは、波長選択的な科学研究や医療用途で重要です。例えば、レーザー光を使用する蛍光顕微鏡や、眼科手術のレーザー照射装置などがあります。また波長によって素材を選択的に加工したり検知したりするのにも有用です。

最後に、可干渉性(コヒーレンス)はレーザー光が干渉を起こす性質を指します。干渉とは同じ波長の異なる光が出会った場合、波高が加算されたり減算されたりして、光の強度に変化が現れる現象で、レーザー光はこの干渉現象を利用して干渉縞をつくり、物質の厚みや密度の計測などに応用されます。インコヒーレントな光(位相や振幅が揃わないランダムな光)は、干渉縞を作ることができません。

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