コラム

2023/02/28

レーザーの種類とは?

レーザーの種類とは?

工業、医療、通信、エンターテイメントなど、様々な分野、用途で活用されているレーザー。レーザーとは自然にある光とは異なり、「まっすぐ」で「単色」で「規則正しく」「強いエネルギーを集中できる(小さく絞れる)」人工の光と言えます。

そのレーザーは、「素材」「波長」「パルス幅」といった切り口で分類する場合があります。今回の記事では、レーザーの種類について解説していきます。

レーザーの素材による種類とは?

レーザーは、その媒質の素材によって以下の4種類に分けられます。
1.固体レーザー
2.液体レーザー
3.気体レーザー
4.半導体レーザー
目的により最適なレーザーが異なりますので、それぞれ見ていきましょう。

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1.固体レーザー

固体レーザーとは、レーザー媒質にイットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)といった鉱石やイットリウム・バナデート結晶(YVO4)など、固体材料を使ったレーザーのことを言います。小型でも大きな出力が得られるのが特徴です。
代表的なものは、波長が1064nm の「YAGレーザー」です。出力により金属の切断、溶接、穴あけから、微細穴加工やマーキングなど産業用で幅広く用いられています。
他にも、光ファイバーの中心に希土類元素Yb(イッテルビウム)が添加された「ファイバーレーザー」、クロムイオンをサファイア結晶に混入させた「ルビーレーザー」や「チタンサファイアレーザー」「ガラスレーザー」などもあります。
ただし、半導体を材料とした場合はかなり性質が異なっているため、同じ固体の媒質でも半導体レーザーとして区分するのが一般的です。

2.液体レーザー

液体レーザーとは、レーザー媒質に液体を用いたレーザーです。
使用する媒質の特性によって有機色素レーザー、有機キレート化合物レーザー、無機レーザーの3種類に大別されます。
代表的なものは「有機色素レーザー」で、色素分子をエチレングリコールやエチル、メチルなどの有機溶媒に溶かしたレーザーです。有機溶媒に溶かす色素分子によって色が変化することが最大の特徴で、多彩な波長でレーザーを発振することができます。また、安全面や実用面が高いため、主に理学分野、医療分野で多く利用されています。

3.気体レーザー

気体レーザーとは、レーザー媒質にCO2(炭酸ガス)などの気体を用いたレーザーです。
中性原子レーザー、イオンレーザー、分子レーザー、エキシマレーザー、金属蒸気レーザーなど、媒質となる気体によって区分される場合もあります。
気体レーザーは波長が長く、主に紙や布・プラスチック・ゴム・木材などの穴あけ、切断、マーキング、金属の溶接、切断などの用途に利用されています。
固体レーザーなど他のレーザーと比べると、レーザー媒質が均質で損失が少ない状態で大きなレーザー出力を得ることができるのが特徴です。

4.半導体レーザー

半導体レーザーとは、レーザー媒質にガリウムヒ素リン(GaAsP)、インジウムガリウムヒ素リン(InGaAsP) 、窒化ガリウム(GaN)などの半導体を用いたレーザーです。
小型の電流源で大きなレーザー出力を得ることができ、サイズがとても小さく安価であることが特徴です。光通信や医療、加工技術、プリンタ光源、プレーヤー光源、レーザーポインタなどの用途に多く用いられています。
また、機器への組み込みが容易なため目的に合った使い方をすることができる点、出力光の強度、周波数の安定度、単一モード発振が容易であるといった点でも特に優れています。

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レーザーの波長による種類について

レーザーは、上記のような素材による分類だけでなく、波長やパルス幅といった別の角度からレーザーを分類する場合があります。
波長が違うことで、同じ対象にレーザー光を照射した際にも吸収率に違いが出るため、材質の合う合わないが出てきます。また、発振器の構造自体も全く違うため、サイズや寿命、消費電力等、仕様の違いも出てきます。
それぞれの波長と特徴について見ていきましょう。

1.赤外線(IR)レーザー

赤外線レーザーは、多くの機能を備えた低コストかつ高出力のレーザーです。
これらのレーザーは小型で軽量であることから、高い入力電力を使わずとも動作することができます。赤外線は、1300〜1700nmにおよぶ非可視スペクトルの放射で、この範囲のレーザーは、電磁スペクトルの「アイセーフ」と言われる目に安全な領域の放射線を放出します。リモコンや温度センサーに活用されています。

2.可視光線レーザー

可視光線レーザーとは、目に見える光である可視領域の波長を放出するレーザーです。半導体赤色可視光レーザーが代表的です。
工業における製造ラインでの部品、製品を識別するバーコードリーダーなどに利用されていたり、光硬化性樹脂を利用した試作モデルの製作、レーザーラインを照射するマーキングレーザー(レーザー照準器)などに使用されています。


3.紫外線レーザー

紫外線レーザーはUVレーザーとも呼ばれ、文字通りUV(Ultraviolet:紫外線)光を出力するレーザーです。そもそもUVは人間の可視広域「波長域380〜750nm」を下回った波長を持っている範囲を指します。波長380nmは人間の目に紫色として映っていて、「紫色の外側にある光線」という意味で「紫外線」という言葉が設定されました。
紫外線レーザーの特徴は以下の3つです。

・集光径が小さく、微細加工が可能
・吸収率が高く、高効率な加工が可能
・内部への透過が抑えられ、ダメージが少ない

上記の特徴により、加工分野や医療分野(皮膚のレーザー治療)などで活用されています。
また、UVレーザーであればダイヤモンドであっても直接加工することが可能で、さらに加工表面の仕上がりが滑らかになることもポイントです。

Young woman receiving laser treatment

4.X線レーザー

波長がX 線の領域にあるレーザーです。
現状では効率が非常に悪く、光波領域レーザーに比べて技術上多数の難点があるため、多くの理論的提案、研究が行われています。
高度な技術分野や、短パルス幅を利用した無損傷データ収集、時分割測定、ウイルスや金属粒子などのコヒーレント(可干渉性)回折イメージングにも利用されています。

レーザーのパルス幅による種類について

レーザーの発振動作には「パルス発振」と「連続発振」があります。パルス発振は、レーザー光の強度や波長・位相をコントロール(光変調)しパルス波を発生させる形態です。
パルス発振動作をするレーザー(パルスレーザー)は、極めて短い時間だけの出力を一定の繰り返し周波数で発振するのが特徴です。
その際の、パルスレーザーから発振された1パルスあたりの時間幅(パルス幅)によりレーザーを分類する場合があります。

・ミリ秒レーザー
・マイクロ秒レーザー
・ナノ秒レーザー
・ピコ秒レーザー
・フェムト秒レーザー

上記の5つは下にいくほどパルス幅が短いものとなり、パルス幅が短いほど熱影響が抑えられる一方、加工量は少なくなります。

上述の通り、レーザーは「素材」「波長」「パルス幅」といった分類で見ることができます。それぞれの優れた特性を活かし、さらに応用することで私たちの日常生活を豊かなものにしています。

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