コラム

2024/02/01

ナノテクノロジーと3D光造形装置

ナノテクノロジーと3D光造形装置

ナノテクノロジーとは、ナノメートル(10億分の1メートル)の超微小な世界で物質を制御する技術のことです。この技術を応用することで、新しい機能や性能を持つ材料やデバイスなどを開発できます。しかし、ナノスケールの構造を作るには、従来の製造方法では不可能な精度が求められます。そこで、注目されているのが3D光造形装置です。

3D光造形装置とは、液状やペースト状の光硬化性樹脂に、UV(紫外線)を照射することで1層ずつ硬化させ、積層して3Dオブジェクトを作る3Dプリンタの一種です。この装置は、サブマイクロメートルの微細構造を造形でき、さまざまな形状や機能を持つ3D細線構造を作ることが可能です。これらの技術は、光学、電子、生体、エネルギーなどの分野で、革新的な応用が期待されています。

この記事では「ナノテクノロジーと3D光造形装置の基礎知識や、最新の研究動向、実用例」を解説します。また、弊社で取り扱っている、最新の3Dプリンタについても紹介します。

1.ナノテクノロジーとは

ナノテクノロジーの概要と応用分野について、具体例などをまじえて紹介いたします。

1)ナノテクノロジーの概要

ナノテクノロジーという言葉を聞いたことがあるでしょうか?この技術は、1ナノメートル(nm)という非常に小さな単位で物質を操作することを可能にします。1ナノメートルは、1メートルの10億分の1に相当し、頭髪の約10万分の1となります。

このスケールで物質を扱うことにより、従来とは全く異なる物理的、化学的性質を持つ新しい材料やデバイスの開発が可能となります。ナノテクノロジーの魅力は、この微細な世界で起こる現象を利用して、従来では考えられなかった機能を持つ製品を生み出すことが可能な点にあります。


参考:労働安全衛生総合研究所「作業環境中のナノマテリアルを計測する」

2)ナノテクノロジーの応用分野

ナノテクノロジーは、その応用範囲が非常に広く、日常生活から高度な科学研究に至るまで、多岐にわたっています。

例えば、医療分野ではナノ粒子を用いた治療薬の開発が進んでおり、特定の病気の細胞のみを選択的に攻撃することで、副作用を最小限に抑える治療法が期待されています。また、電子機器の分野では、ナノスケールでの半導体などの素材開発により、より高速で省エネルギーなコンピュータチップの製造が可能になっています。

さらに、環境保護においてもナノテクノロジーは重要な役割を果たしています。例えば、水質浄化技術におけるナノフィルタの開発が挙げられます。これらのフィルタは、従来のものよりも遥かに細かい不純物を除去することができ、清浄な飲料水の供給が可能です。また、エネルギー分野では、太陽光発電の効率を飛躍的に向上させるナノ構造材料が開発されており、再生可能エネルギー源としての可能性を大きく広げています。

2.3D光造形装置の活用例

3Dプリンティング技術は、さまざまな業界に革命をもたらし続けています。特に、3D光造形装置は、その精密さで注目を集めています。この装置は、紫外線(UV)光を用いて、光硬化性樹脂を層ごとに硬化させ、立体物を造形していく技術です。このセクションでは、エレクトロニクスと医療という2つの異なる分野での3D光造形装置の応用例に焦点を当てて紹介いたします。

1)エレクトロニクス分野での3D光造形の応用

3Dプリンタは、製造業における部品やツールの試作において、設計・検証期間の大幅な短縮や複雑な構造への対応など、多大な貢献をしています。さらに3D光造形装置は、ミクロンサイズの形状まで可能な非常に精密な造形を提供し、エレクトロニクスデバイスの小型化と機能向上を牽引します。現在は利用可能な素材の多様化もありプロトタイピングだけでなく、量産のための金型や製品自体も製造できます。

例えば3D光造形装置は、フォトニック集積回路(PIC)の造形に適しています。フォトニック集積回路(PIC)とは、高機能なフォトニックコンポーネントの製造において、小型化とコスト削減を達成するための重要な技術です。この技術に3D光造形装置を導入することで、高精度な微細構造を、ウェハ、チップ、レーザー、シングルファイバ、ファイバアレイ、ハイブリッドモジュール上に直接造形することができます。

2)医療分野での3D光造形の応用

医療分野における3Dプリンティング技術の進歩は、直接的に人々の生命と健康に貢献しています。3D光造形装置の使用により、患者特有の身体構造に合わせたカスタムメイドの医療器具やインプラントが製造可能になりました。例えば、顎の再建手術において、患者の骨格に完璧にフィットする顎のインプラントを製作できます。これにより、手術の正確性が向上し、回復時間が短縮され、患者の苦痛が軽減されます。

さらに、3D光造形技術は、外科手術のシミュレーションや教育にも利用されています。手術前に患者の臓器の3Dモデルを作成することで、外科医は手術プロセスを事前に綿密に計画し、練習可能です。これは、特に複雑または高リスクの手術において、成功率を高めることに貢献しています。

3D光造形装置の活用は、エレクトロニクスから医療に至るまで、私たちの生活の多方面にわたって革新をもたらしています。これらの技術がさらに進化し、新たな応用分野が開拓されることで、未来の社会はより便利で、より健康なものになることでしょう。3D光造形技術の持つ無限の可能性を最大限に活用することが、我々の未来を形作る鍵となるのです。

3.日本レーザー取り扱いの微細構造を造形する高精細3Dプリンタ

弊社(日本レーザー)が取り扱うNanoscribe(ナノスクラブ)社の3Dプリンタは、サブマイクロメートルからの精密な造形を実現する先進的な技術を提供しています。この装置は、研究から産業用途まで、世界中の幅広い分野で革新的な成果をあげています。

関連商品:Nanoscribe社 高精細3D光造形装置

1)Nanoscribe社3D光造形装置の特徴

Nanoscribe社の3Dプリンタは、世界最高精細の光造形装置で、最先端の研究・開発を革新する卓越した精度と速度で知られています。この装置は、光硬化性樹脂に特定の波長のレーザー光を照射し、微細なフォーカスポイントで樹脂を硬化させることにより、複雑な3D構造を一層ずつ積み重ねていきます。このプロセスにより、非常に精細なディテールを持つオブジェクトを製造可能です。また、2光子重合という技術を利用しており、これはレーザーのフォーカス点でのみ樹脂が硬化するため、非常に高い精度での造形が実現されます。この技術の利点は、細かいディテールの正確な再現、高速な造形能力、そして多様な形状や機能を持つ3D構造の製造が可能な点にあります。

2)3D光造形装置の応用例

Nanoscribe社の3D光造形装置は、ただ微細な構造を造形できるだけでなく、その応用範囲は驚くほど広範囲に及びます(製品ごとに得意な応用分野は異なります)。

例えば、光学分野では、レンズやミラーなどの光学部品の製造に利用され、従来の製造方法では達成困難だった精度と性能を実現しています。生命科学の研究では、細胞スケールでの環境を模倣した3D構造の作成により、細胞の挙動をより自然な状態で観察することが可能になり、新しい医療技術や治療法の開発に寄与します。

加えて、マイクロ流体工学の分野では、非常に小さなチャネルやキャビティを持つデバイスの製造にこの技術が利用されています。これらのデバイスは、化学反応や生物学的プロセスを制御するために必要な精密な流体制御を可能にし、診断機器などの開発に貢献しています。

このように、Nanoscribeの3D光造形装置は、その高精度な微細加工能力により、多様な分野での研究開発とイノベーションを加速しています。これらの技術は、未来の科学、工学、医療の進歩に不可欠な要素であり、その可能性はまだまだ無限大です。

これらの3Dプリンタ技術は、これからも多くの分野で新たな可能性を切り開き、私たちの生活や社会に大きな影響を与え続けることでしょう。その精密さと応用の広さは、まさに現代科学技術の粋を集めたものであり、これらの技術の進化には目が離せません。

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