コラム

2023/06/30

【レーザー製品の安全基準】レーザークラスの分類と安全対策、関連する法令等について解説

【レーザー製品の安全基準】レーザークラスの分類と安全対策、関連する法令等について解説

レーザー製品は、さまざまな分野で活用されていますが、使用方法を間違えると人体に危険をおよぼすことがあります。こうした背景から「日本産業規格(JIS C 6802)レーザーの安全基準」が定められており、レーザーをクラス分けして使用方法や危険性、安全対策を示しています。

本記事では、レーザークラス分類の特徴や必要な安全対策、関連する法令などについて解説します。それぞれのクラスに応じた注意点や、危険性などについても触れていきます。レーザー製品を扱う方は、ぜひこの記事を参考に、安全対策などに関する知識を深めていきましょう。

※JISは、法改正に伴い2019年7月1日より「日本工業規格から日本産業規格」と改称されています。

参考資料:経済産業省「JIS法改正」

1.レーザー製品の安全基準

レーザーの危険性や安全基準が定められた背景などについて説明します。

1)レーザー製品の危険性

レーザーによる事故の中でも、一般的に起こりやすいのが、レーザー光による失明や火傷などです。その他にも、レーザー加工を行う場合には、レーザー光からの直接的な危険のほか、高電圧による感電事故やアシストガスによる火災・中毒、または加工時に発生する粉塵によるじん肺症などの危険性もあります。さらに、自分では直接レーザーを扱わない方であっても、他者によって事故が引き起こされるなどの、二次的な被害に巻き込まれる可能性も考慮しなければなりません。


2)レーザー製品の安全基準を各国が規定

レーザーの安全性については、1960年中頃からアメリカで検討が開始され、1970年代には民間団体や政府機関によって規格が策定されました。アメリカで制定された安全規格をお手本として、世界各国で規格策定が行われるようになりました。日本でも、1970年代後半からレーザー機器の安全基準制定について検討が始まり、今日まで受け継がれています。

現在では国際規格であるIEC規格(IEC 60825-1)、それを日本語に翻訳した「日本産業規格(JIS C 6802)レーザー製品の安全基準」、アメリカFDAのレーザー安全基準「21 CFR Part 1040」などがあります。日本のレーザー製品は「JIS C 6802」の要件をクリアしていれば、IEC規格やアメリカの規格も満たすことになります。

3)レーザークラスの分類方法

レーザークラスの分類は、レーザー製品が放出する光線の出力パワーと波長などに応じて決定されています。この分類は、放出されるレーザー光線による被ばく限界を超えるリスクを最小限に抑えることを目的としています。

2.レーザークラス分類による安全基準:日本産業規格(JIS C 6802)

日本ではレーザー製品に関する安全性を確保するために、「レーザー製品の安全基準(JIS C 6802)」により、レーザークラスが8つに分類されています。

クラス   概要
1●ルールを守って使用すれば安全
最も安全なレーザークラスであり、皮膚や目に対する直接的な危険性がないため、特別な安全対策は必要ありません。ルールを守って使用すれば、光学器具(ルーペまたは双眼鏡等)を使っても安全です。ただし、使用方法を誤ると障害を引き起こすことがありますので、油断しないようにご注意ください。
1M●光学器具の使用以外ではクラス1と同じ安全性
裸眼でのビーム内観察でも、ルールを守って使用すれば安全です。ただし、光学器具を使用して観察する場合には、露光による目の障害が生じる可能性があります。
1C●少し特殊で取扱時はそれぞれの製品に安全事項を定める
医療や美容分野にもちいられるレーザー製品で、人体に照射されることを前提として開発されています。ただし、目への照射は避ける必要があります。また、出射されるレーザーのクラス分類は3R、3B、4の場合もあり、これらは対象組織に危険をもたらすことがありますので注意が必要です。
2●凝視以外の瞬間的な使用では安全
短時間の露出では目に対する影響は認められません。ただし、故意にレーザーを凝視すると危険があります。光学器具を使用する場合も、正しく使えば目に障害を引き起こすリスクは増加しません。
2M●光学器具の使用以外ではクラス2と同じ安全性
裸眼においては、クラス2と同様の安全性です。従って、意図的な凝視は危険が生じる場合もありますので注意が必要です。さらに、光学器具を使用する場合は、使用状況によって目に障害が生じる可能性があります。
3R●直接見るのは危険だがリスクは比較的小さい
直接的にレーザー光を目で見ると、障害が生じる可能性がありますが、そのリスクは比較的小さくなります。障害が生じるリスクは、露光時間が長くなるにつれて増大します。また、意図的にレーザービームを目に当てることは、非常に危険であるため厳に慎む必要があります。
3B●レーザーを直視することは極めて危険。皮膚への照射にも注意
直接レーザービームを見ることは危険であり、皮膚への照射も避けなければなりません。加えて、条件によっては、皮膚障害や可燃物の発火などのリスクがあります。ただし、拡散反射光であれば、比較的に安全です。
4●高出力。火災を発生させる危険性もあり取扱注意
ビーム内の観察や皮膚への露光は非常に危険です。さらに、拡散反射光によっても深刻な危害が発生することがあります。加えて、火災が発生する危険性もあるため、あらゆるケースにおいて注意が必要です。

3.レーザー製品使用時の安全対策

レーザー製品を使用するときの、主な安全対策についてご説明します。

1)レーザー機器管理者の設置

レーザーの利用に関わる研究者、技術者、作業員など、すべての関係者は「レーザー使用者」として認識されます。このように多くの関係者が存在するため、レーザーに対する安全知識を持つ方がいれば、持たない方もいらっしゃいます。このように様々な属性の関係者がいるなかで、安全性を確保するために、「クラス3R・クラス3B・クラス4」のレーザー機器には、レーザー機器管理者(レーザー安全管理者)などを任命することが求められます。

参考資料:厚生労働省「レーザー光線による障害防止対策要綱」

2)安全対策に関するマニュアル作成や研修の実施

レーザー製品の使用に関しては、使用者の安全を確保するために、製品面と知識面の両方から安全対策に取り組む必要があります。

製品面では、製品の構造や設備の安全性を確保することが重要です。また、知識面では、ルールの策定や意識啓発、安全教育なども必要です。使用者側も、特定のレーザー製品を扱う場合には、あらかじめ安全確保に必要な手順を確認し、遵守しなければなりません。製造業者が安全対策を講じるケースも多いですが、レーザー管理者および使用者側も自主的に対策を講じる必要があります。

3)保護具の使用

レーザー照射部が視界に入るケースなどでは、レーザーの波長に応じた適切な保護具(保護プレート、カーテン、パーティション等)を用いて加工部を覆うことが望ましいでしょう。なお、大型加工装置など照射部全体を覆うのが難しい場合には、管理区域を設定し立ち入りを制限する対策が必要です。管理区域内で視認する必要がある場合も、レーザー保護カーテンやパーティション等を用いて、照射部外にレーザーを漏らさないようにする措置が必須です。

4)保護メガネの使用

保護メガネは簡単に着用でき、視野が広く、換気性があり、くもりが発生しないような適切なものを選ぶようにしなければなりません。保護メガネは、レーザーによる目の損傷を防ぐための補完的手段として考え、まずはしっかりと安全教育の実施や保護具設置など、使用者の安全を確保する必要があります。

5)防護服などの使用

人体に損傷を与える可能性があるケースでは、適切な防護服を着る必要があります。特に、クラス4では発火の危険性があるため、耐燃性の高い防護服を選ぶように心がけましょう。

6)レーザー管理区域や警告・規格情報ラベルの使用

レーザー製品には説明・警告ラベルが必要です。このラベルには、製品のレーザー放射の最大出力や波長など必要な情報を記載しましょう。また、クラス1のレーザー製品を除く各種製品には、説明・警告ラベルに加えてレーザークラス表示も必要です。

レーザー製品を安全に取り扱うためには、これらの基準に沿った適切なラベル表示や安全対策を講じることが求められます。製品を使う前には、必ず取扱説明書をよく読み、正しく使用するようにしましょう。

4.レーザーに関連する法令等

レーザーの使用や安全対策に関する法令等をご紹介します。

1)労働安全衛生法

労働安全衛生法において、労働衛生管理体制の整備が求められています。クラス3R、クラス3B、クラス4のレーザー機器については、レーザー機器管理者の任命と、レーザー光線による障害の防止対策の計画策定と実施が必要です。レーザー光線は、人の目や皮膚にとって危険であり、誤った取り扱いは重大な事故を招きます。企業や労働者は、これらの制度やルールを十分に理解し、適切な対策を講じるように心がける必要があります。

2)厚生労働省(レーザー光線による障害防止対策要綱)

前述の労働安全衛生法と関連しますが、厚生労働省はレーザー光線にさらされる業務等に従事する労働者の障害を防止するため、「レーザー光線による障害防止対策要綱」を策定しています。この要綱では、レーザー光線の特性やクラス分け、レーザーガイドラインの作成や管理、保護具の選定や使用方法、業務における注意点などが詳細に規定されており、関係事業者に対して指導が行われています。

今後も、レーザー光線による障害の防止に努めるため、厚生労働省には、適切な指導と啓発を行っていくことが求められています。また、レーザーを取り扱う企業は、要綱やJIS規格の遵守を徹底し、社員の安全を確保することが必要とされています。

参考資料:厚生労働省「レーザー光線による障害防止対策要綱」

3)製造物責任法(PL法)

製造物責任法(PL法)は、製造物の欠陥によって生じた損害の責任を製造業者等に課し、損害賠償を求めることができる法律です。中でもレーザー製品の場合、注意が必要です。

レーザー製品は、その高い光出力エネルギーによって、人体に深刻な損傷を与える危険性があります。製造業者は、このような危険性を把握して、製品に適切な注意表示を行う必要があります。また、製造物責任法に基づき、レーザー製品が欠陥品であると認定された場合、製造業者は損害賠償責任を負うことになります。なお、製造物責任法は、製品の欠陥だけでなく、製品に付加された警告・注意表示が不適切であった場合にも責任を負うことがあります。

製造物責任法によって製造業者等に課せられる責任は、製品の種類や用途によって異なります。しかし、製造業者等は製品の使用によって生じた損害についてなんらかの責任を負うことになるため、製品の安全性を確保するための対策が求められます。レーザー製品に限らず、すべての製品に対して、製造業者が製品の安全性を確保し、消費者が安心して使用できるよう適切な注意義務を負うことが重要です。

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