レーザー顕微鏡と白色干渉計の違い

SENSOFAR Metrology

光学顕微鏡を用いた共焦点と光干渉方式による3次元形状測定技術

光学顕微鏡を用いた共焦点と光干渉方式による3次元形状測定技術

 本稿では、対象サンプル表面の微細な三次元形状、粗さやうねりを計測するための方法の内、非接触での計測ができる代表的な製品であるレーザー顕微鏡と白色干渉計の違いについて紹介します。レーザー顕微鏡や白色干渉計という名称が使われる製品には、用途や原理に幅があり、本稿では、工業用途、対象サンプル表面の三次元の輪郭形状を面で計測できるもの、取り替え可能な対物レンズを使用している光学顕微鏡をベースにした装置を対象としています。

1. 原理

1.1 レーザー顕微鏡(共焦点方式)

 レーザー顕微鏡という言葉は、照明光源としてレーザー、光学系に共焦点方式を使用した光学顕微鏡で3次元像を取得できる装置の呼称としてよく知られています。高分解能で3次元形状を取得するために重要となる共焦点光学系について主に説明します。3次元像を得るために、レーザーはその輝度の高さなど共焦点方式に適した光源ではありますが、ランプやLEDを使用している共焦点顕微鏡も販売されています。
図1に示されている画像は、同じサンプル表面を通常のカメラと対物レンズで構成された通常の光学顕微鏡で観察した(a)と共焦点顕微鏡で撮像した(b)です。(a)の画像は、(b)の画像と比較して、ピントの合っていないぼやけた像が画像に含まれています。それに対し、(b)はピントのあっている像のみが得られています。このように焦点深度を浅くできることが共焦点光学系の最大の特長になります。
 共焦点光学系の代表例として、レーザー顕微鏡に使用されているピンホール共焦点法の光学系の概略図を図2に示します。光源と検出器の前にピンホールが配置されています。これによりピントの合っていない像は、ピンホールにより遮られてしまい、強い信号が取得できません。その結果、ピントの合った合焦点像だけを取得することができます。ピンホール共焦点の場合は、点でデータを取得することになるため、面で捉えるために、XY方向のビーム走査を行います。XY走査は光路の対物レンズにビームが入る前にガルバノミラーなどのスキャナーを用いて行う方法が一般的です。この結果、図1(b)に示されるような面の合焦点像が得られます。三次元測定を行う場合、次にZ方向への走査を行います。対物レンズを電動ステージで動かしてZ走査を行う方法が一般的です。Zのステップ間隔を設定し、Z高さごとの面の合焦点像を取得していきます。データの取得が完了すると、XYの座標ごとにZ高さ(Z)と光検出強度(I)の関係から、図3にあるようなI-Zカーブを計算します。このI-Zカーブのピーク位置が対象サンプルの表面の高さとなり、3次元表面形状データとして保存されます。焦点深度が深い光学系を用いるとピント外れの信号がI-Zカーブ上にのってくるため、精度を悪化させます。したがって焦点深度の浅い共焦点光学系が3次元測定においては重要になってきます。
 光学系にはピンホールを用いる方式だけでなく、多数の穴の開いた回転ディスク、スリットなど、他の方法もあります。これらの場合、XY走査は回転ディスクを回転させる、スリットを横方向に走査する、検出器はポイントセンサーではなく、アレイセンサー(CMOSカメラ等)使うなど、方式に合わせたスキャン方法、検出器が用いられています。

 

図1 (a)通常の光学顕微鏡像 (b)共焦点像

 

図2 ピンホール共焦点顕微鏡の概略図 図3 共焦点方式の代表的なI-Zカーブ

 

1.2 白色干渉計(光干渉方式)

 白色干渉計は、名称だけ見れば、光源に白色光を用いて光による干渉の原理を利用して形状測定しているもの製品を示しています。しかしながら、実際には、白色光を用いない場合であっても、慣習的に白色干渉計という名称が使われてしまっているので、本稿では光干渉方式としてまとめて紹介します。
光干渉方式の代表的な光学系の概略図を図4に示します。検出器には、アレイセンサー(CMOSやCCDカメラ)を用いたシンプルな光学顕微鏡の光学系に近いですが、大きな違いは、図5にある干渉対物レンズを使用している点です。光源から出た光は対物レンズ内で、2つの光路に分けられ、一方はリファレンスミラーで反射され、他方は、サンプル表面で反射されます。2つのビームは同一光路に戻り、重なり合うと、図6のような空間干渉パターン(干渉縞)が得られます。2つのビームの位相が一致していると明るくなり、半波長ずれると暗くなります。干渉縞は2つのビームの光路差の情報をもっており、Z方向に対物レンズをスキャンした際に現れる干渉縞のコントラスト変化や位相変化を解析することにより、サンプル表面の凹凸形状データを取得することができます。この干渉縞を解析する手法として、主に次にある二つの方法が用いられます。

 

図4 代表的な白色干渉計(光干渉方式)光学系 図5 干渉対物レンズ

 
 

図6 干渉縞(左図:I-Zカーブ、右図:傾いた平面の干渉位相コントラスト像)

 

1.2.1 垂直走査干渉法

 Z方向に走査したときに得られるI-Zカーブは光干渉方式の場合、図6の左図のようになります。2つのビームの光路が完全に一致したZ高さで、つまりピントのあった高さで、I-Zカーブの強度(または、コントラスト)が最大になります。この現象を利用してZ方向に走査した際に得られる連続した干渉縞像から対象サンプル表面の高さを検出することが可能になります。
 光源に白色光を用いた場合、図6(a)のようなI-Zカーブとなります。白色光はブロードな波長域を持つ低コヒーレンス光、つまり、過干渉距離(コヒーレンス長)が非常に短い光であるため、干渉縞は焦点高さ付近(対象サンプル表面付近、±数µm程度)でのみしか現れません。そのため低ノイズに焦点高さを測定することが可能で、高い垂直方向分解能(1nm程度)が得られます。この方式が、垂直走査型低コヒーレンス干渉法(Coherence Scanning Interferometry:CSI)と呼ばれます。WLI:White Light Interferometryなどの呼ばれ方をする場合もあります。
 光源に波長幅の狭い光、単色光を用いた場合、過干渉距離が長いため、図6(b)のようなI-Zカーブとなります。過干渉距離が長い分、同じように焦点高さを検出する垂直走査型のアルゴリズムを用いると、垂直方向分解能が劣ります。その一方で、Z方向の走査速度を高速にできるというメリットがあり、顕微鏡のような外観ではなく、センサーとしてパッケージ化され販売されています。

 

1.2.2 位相シフト干渉法

 位相シフト干渉法は、単色光を用いて行います。この方式は、Z方向にある決まったステップ間隔(λ/8、λは使用している光源の中心波長)で走査し、参照面とサンプル表面との光路差をずらしていった際に、得られる複数枚の画像から、参照面とサンプル表面間の位相差を求め、位相差からZ高さを計算しています。この位相差を求めることにより0.1nm以下の高さ分解能を実現することができます。しかしながら、この技術は、隣接する各ピクセル間が連続的で滑らかにつながっている面ではないとうまく測定することができません。これは、光路差が1波長分であっても、2波長分であってもほぼ同じ信号が検出されてしまうためで、位相差からZ高さを計算する原理上の制限です。したがって、粗い面の計測には適しておらず、主に光学部品用途など高精度に研磨された面の計測に主に用いられます。

2. 性能の比較

2.1 水平方向分解能

 ともにサブミクロンメートル台の分解能を持ちますが、レーザー顕微鏡(共焦点方式)の方が若干良くなります。水平分解能を決める主要因は対物レンズの開口数(NA)と照明光の波長です。NAが高ければ高いほど、照明光の波長が短ければ短いほど、水平分解能は小さくなります。レーザー顕微鏡で使用される明視野対物レンズは、最大0.95の高いNAのレンズが一般的に販売されているのに対し、白色干渉計で使用される干渉対物レンズは、最大でも0.8程度です。また、レーザー顕微鏡は上位機種にUVレーザー(波長400nm以下)を使用しているのに対し、白色干渉計は、波長の長い可視光を使用しているためです。
 

2.2 垂直方向分解能

 白色干渉計(光干渉方式)の方が良いと言われます。垂直方向分解能は、オプティカルフラット(校正用の平面ミラー)を複数回測定した際の再現性、つまりノイズレベルとして定義されます。ある製品の垂直分解能を対物レンズの倍率ごとにプロットしたグラフを図7に示します。共焦点方式は焦点深度の浅くすることで垂直分解能を高めていますが、これは対物レンズの倍率(NA)に依存してしまいます(図3を参照)。それに対し、光干渉方式は、光の干渉現象を利用しているため倍率に依存せずに優れた値が実現可能です。その値は、CSIモード:1nm、PSIモード:0.1nm、または、0.01nmという優れた値を実現している製品も販売されています。
 
 共焦点方式も開発が進みノイズレベルが向上してきており、nm台の計測も可能になってきています。したがって、高倍率については、CSIモードと遜色のないデータを取得することができます。ただ、低倍率を用いた場合にはCSIモードとの差はまだまだ大きいため広い視野と高い垂直分解能が必要となる面のうねりを測定するような用途ではCSIの方が優れています。またPSIモードと比較すれば、大きな差が存在します。

 

図7 垂直方向分解能の比較

 

2.3 角度特性

 角度特性の高さ、つまり、急傾斜面の測定はレーザー顕微鏡(共焦点方式)が良いとされています。まず、光干渉方式のPSIモードは急傾斜面の測定には原理上対応できません。共焦点方式とCSIモードは、ともにサンプル表面からの反射光を解析し、焦点のあった高さを検出する方式を取っていますが、測定面がほぼ垂直のような急傾斜面や、複雑な凹凸を持った面の場合、十分な反射光が得られず、どうしても測定面内でデータの欠落点ができてきます。検出器やアルゴリズムの向上により、CSIモードにおいても急傾斜面での欠落点は減ってきていますが、共焦点法の方がより欠落点は少ないと言われます。

 

2.4 測定スピード

白色干渉計(光干渉方式)の方が速いと言われます。その理由は次の2点が挙げられます。

 

  • ① 共焦点方式はXY走査が必要なのに対し、光干渉方式はXY走査が不要なため。
  • ② 光干渉方式は、垂直分解能が対物レンズの倍率に依存せず、低倍率で高精度測定ができるため。

 

①については、同じ倍率の対物レンズで比較した場合、共焦点方式も走査方法の工夫や検出感度の高さなどにより高速化を図っているので、共焦点方式が高速な場合もあります。また、②について具体的に説明していきます。5倍対物レンズの視野は、3mm角程度に対して、100倍対物レンズでは、0.15mm角程度しかありません。したがって3mm角を測定するのに、5倍であれば1回の測定で完了するのに対し、100倍の場合は400回繰り返す必要があります。水平方向分解能を必要としない、つまり低倍レンズが使用できる用途であれば、垂直方向分解能が対物レンズの倍率に寄らず一定である光干渉方式の方が、短時間で同じ面積を高精度に測定することができます。

 

2.5 観察能力

 顕微鏡に求められる能力として、形状測定だけではなく、時に表面の観察能力を求める場合があります。その場合、レーザー顕微鏡(共焦点方式)が適しています。主な理由としては、対物レンズの違いが挙げられます。干渉対物レンズは焦点位置で干渉縞を作ってしまうため、単純な観察のみを求めた場合不向きです。共焦点方式は明視野対物レンズを使うため、こちらの方が観察には適しています。また、レーザー顕微鏡には高精細なカラーカメラ(CMOSやCCD)と照明用の光源からなる観察のための光学系も内蔵されているケースが多く、これらも観察を大いに手助けします。

3.まとめ

 2章の内容をまとめると下記のような表になります。それぞれ得意としている部分が異なるため、用途に応じた装置選定が重要になってきます。

 

レーザー顕微鏡 白色干渉計 備考
原理 共焦点方式 光干渉方式
水平分解能 ともにサブミクロン
垂直分解能 白色干渉計:最小0.01nm, 倍率に依存しない
角度特性
測定スピード 白色干渉計:低倍対物レンズによる大面積測定が可能
観察力 レーザー顕微鏡:高精細なカラー画像