広視野イメージング:Si太陽電池のELマッピング
太陽電池を「逆方向」に駆動(電流印加)すると、電極から注入されたキャリアが活性層内で再結合し、エレクトロルミネッセンス(EL)が発生します。理想的なデバイスでは、すべてのキャリアがバンド間再結合を起こします。シリコンの場合、この再結合に伴い(極めて低い効率ではありますが)1100 nm付近の波長の光が放出されます。 しかし、結晶構造に欠陥があると、好ましくない別の再結合経路が生じることがあります。これらは一般に非発光再結合と呼ばれますが、時には光子を放出するプロセスとなることもあります。その際放出される光子は、通常、バンド間発光よりも低いエネルギーを持ちます。こうした極めて稀な光子を捉えることで、欠陥のエネルギー状態や分布に関する情報を得ることができます。 測定例:- HERA SWIR:900–1700 nm
- 試料:Si太陽電池
- 測定距離:約75 cm
- 空間分解能:約250 µm
HERAの光学系にはスリットがないために光の透過効率を極めて高くたもてます。これにより極めて微弱な発光の測定が可能です。
Figure 2Aおよび2B:1150 nm(バンド間発光)および1600 nm(欠陥発光)におけるEL像を示しています。これらの画像は4回のスキャンの平均であり、総取得時間は5分です。 画像を解析すると、主発光に比べてはるかに暗いにもかかわらず、欠陥領域が明瞭に分解されていることが分かります。また、欠陥発光が強い領域では、バンド間発光が比較的弱くなっています。両方の波長で暗くなっている領域がいくつか確認できますが、これはサンプルの輸送中にセルが受けた損傷によるものと考えられます。 Figure 2Aと2Bに示した小さな正方形の関心領域(ROI)から取得したスペクトルを、Figure 2Cに対数スケールで示しています。顕微鏡イメージング:金属ハライドペロブスカイト薄膜のフォトルミネッセンス顕微鏡観察
金属ハライドペロブスカイトは、スピンコーティングのような、低コストかつ比較的簡便な手法によって、高効率な太陽電池やLEDを作製することを可能にします。こうした手法における課題の一つは、顕微鏡スケールで組成を均一に保つことです。フォトルミネッセンス(PL)顕微鏡は、このような不均一性を評価するための特に強力なツールです。 HERAハイパースペクトルカメラは、正立型・倒立型を問わず、あらゆる顕微鏡のCマウントカメラポートに接続でき、校正作業を必要とせず、すぐにハイパースペクトルデータの取得を開始できます。 この実験では、HERA VNIR(400~1000 nm)をNikon LV100正立型顕微鏡(Figure 3)に接続し、2種類のハライド前駆体を合金化した材料のバンドギャップ分布を評価しました。 2種類のハライド前駆体を合金化する利点は、材料のバンドギャップを調整できることです。しかし、これら2つの成分はしばしば相分離(de-mixing)を起こし、性能低下につながります。この測定の目的は、この相分離を検出することにあります。 実際、局所的な混合比の変化によって局所的なバンドギャップが変化し、その結果、異なるエネルギーの光子が発光されます。 この構成では、励起光として水銀ランプを使用し、バンドパスフィルターによって350 nmにフィルタリングした後、発光光路に配置したダイクロイックビームスプリッターによってカメラに入射しないようにしました。 HERAの高い光スループットにより、フルデータキューブ(130万スペクトル)を約1分の測定時間で取得することができました。
Figure 4A & 4B:それぞれ400~1000 nmの全波長域にわたって積算した総信号の全体像および拡大像を示しています。これらの画像から、1 µm程度の長さスケールを持つ明るい領域が確認できます。
Figure 5Bの明るい領域と暗い領域のスペクトル(それぞれ黒線と赤線)を比較すると、暗い領域からも実際には発光が生じていることが分かります。 また、暗い領域では発光強度が低いだけでなく、明るい領域よりも短波長側に発光ピークが位置しています。実際、スペクトルは二峰性の形状を示しており、これはおそらく相分離した前駆体からの発光に対応していると考えられます。このバンドギャップの変化は、Figure 5Aの発光マップから明瞭に確認できます。これにより、低バンドギャップ領域がより明るく見える理由も理解できます。おそらくキャリアは高バンドギャップ領域から低バンドギャップ領域へ緩和・移動し、そこで放射再結合を起こすまでに元の領域へ戻ることができないためだと考えられます。マクロイメージング:ペロブスカイト・シリコンタンデム太陽電池のELマッピング
HERA用のマクロレンズアクセサリは、2~3 cm程度のサイズの対象物に対して光の集光効率を最適化するもので、半導体デバイスのイメージングに適しています。この例では、シリコン・ペロブスカイトタンデム太陽電池(3×3 cm)から発生するエレクトロルミネッセンス(EL)スペクトルのマップを取得しています。Figure 6は、この測定に使用した非常にシンプルなセットアップを示しています。タンデムセルはベンチトップ型電源に接続し、一定電圧1.86 Vに設定しました。電源からセルに注入されたキャリアは、ペロブスカイトおよびシリコンの両方の活性層で再結合し、それぞれの活性層の光学バンドギャップに対応するエネルギーを持つ光子を放出します(ペロブスカイト:約750 nm、シリコン:900 nm超)。
Figure 7:パネルAは、ペロブスカイト層からの発光を示しています(見やすくするため、明るさは対数スケールで表示)。一方、パネルBはシリコン層からの発光を示しています。これら2つの画像は、1枚のハイパースペクトル画像から取得されたものです。両方の層に不均一性が見られますが、ペロブスカイト層の方がはるかにばらつきが大きく、また、より短い長さスケールで変化しています。これは、膜が持つ面状(ファセット状)で粒状の構造を明らかにしています。
Figure 8:HERAでは各ピクセルについて全スペクトルを取得できるため、各層からの発光の明るさだけでなく、それ以上に多くの情報を明らかにすることができます。 Figure 8Bは、3つの関心領域(青、赤、黄色の四角で示した領域)から取得したELスペクトルを示しています。これらのスペクトルから、750 nm付近を中心とするペロブスカイトの発光と、900 nm以上に現れるシリコン層からの発光の立ち上がりを確認できます。スペクトルからは、デバイスの電極付近でペロブスカイト発光が長波長側へシフト(レッドシフト)していることが分かります。前ページで示した混合ハライドのPLの例とは異なり、今回のレッドシフトした領域では発光強度も低下していることが分かります。 画像全体の各ピクセルについてペロブスカイト発光の平均波長を計算することで、Figure 8Aに示す発光波長マップを作成できます。このマップから、電極周辺の領域では、ペロブスカイトの光学バンドギャップが低下しているように見える領域が明瞭に確認できます。これは、電界によって誘起されたハライドの偏析、あるいはペロブスカイトと金属電極との反応による可能性があります。