レーザー干渉リソグラフィーによる高度なナノ構造作製
Skylark Lasers ケーススタディ:Skylark 349 NX UV DPSSレーザーを用いた干渉リソグラフィーによる高度なナノ構造作製。
ドイツのマルティン・ルター大学ハレ=ヴィッテンベルク校 材料科学学際センター(CMAT)Bodo Fuhrmann博士との共同研究による、2024年12月4日公開のケーススタディです。

ナノストラクチャの製造課題への取り組み
ナノストラクチャの作製は材料科学において極めて重要な役割を果たすもので、フォトニクス、マイクロ・エレクトロニクス、センシングなどの技術進歩を牽引しています。ナノスケール・パターン形成のための最も高精度な方法の一つは、コヒーレント光源を用いて精密なデザインを実現する 紫外線レーザー干渉リソグラフィー(LIL) です。
しかしますます複雑かつ微細な構造の作製が目指される中、解像度、波長の不安定性、エネルギー効率といった従来のレーザーシステムの限界が大きな障壁となっています。これらの課題は、量子コンピューティング、高効率太陽電池、分子センサーといった次世代技術の開発に直接的な影響を与え、ブレークスルーに依存するようなナノスケール分野の進歩を遅らせています。こういった限界を克服することは、エネルギー、ヘルスケア、情報処理の未来を形作るナノテクノロジーのポテンシャルを最大限に引き出すために不可欠です。
マルティン・ルター大学ハレ=ヴィッテンベルク校の材料科学学際センター(IZM; Interdisciplinary Centre for Materials Science)では、長年にわたって 266nm UVレーザーが研究の中心とされてきました。このシステムは、周期パターン 150~650nm の形成には効果的でしたが、以下の課題がありました。
- 周期範囲の制限:650nmから1000nmの周期構造は実現不可能でした。
- フォトレジスト適合性:266nmでは適合するレジストの範囲が限られるため、設計の柔軟性と革新性が制限されていました。
これらの課題を克服するため、IZMでは、349nm 紫外線ダイオード励起固体(UV DPSS)レーザーである Skylark 349 NX をテストしました。Hg-i線に近い波長と優れたビーム安定性を備えたこのレーザーは、干渉リソグラフィーの機能を拡張する可能性を示しました。
本ユーザーによって評価された、Skylark 349 NX レーザーの主な成果を、以下に記述します。なお本ケーススタディ全文は こちら(英語PDF, Skylark Lasersサイト内)からお読みください。
Skylark 349 NX レーザーはテスト全体を通じて非常に優れたパフォーマンスを発揮し、干渉リソグラフィーの精度を実現するために不可欠なビーム調整、パワー、プロファイルにおいて高い安定性を維持しました。
干渉リソグラフィー向け Skylark 349 NX UV DPSSレーザーの特徴
IZMが評価した Skylark 349 NX は、高精度アプリケーション向けに設計された、100mW UV出力 CW DPSSレーザーです。このレーザーは、最大 400mW まで出力可能で、高安定性モノリシック設計により、従来のレーザー干渉リソグラフィー装置における主要な制約を解消します。
- 安定性の高い 349nm 波長:Hg-i線(365nm)に近接しているため、より多様なフォトレジストに対応できます。
- 高い出力安定性:100mW の安定した出力により、高精度の干渉パターン形成に不可欠な、均一な露光を実現します。
- 長いコヒーレンス長:よりシャープで鮮明な構造の形成を可能にします。
- 優れたビーム品質:良好なビームプロファイルとアライメント精度により、レーザーは 10µm のピンホールを偏差なく通過し、パターン形成の精度を維持します。
- 熱マネジメント:内蔵冷却システム(19℃に維持)により、長期的な動作安定性を確保します。
これらの特長をもつ Skylark 349 NX は、高度なレーザー干渉リソグラフィーに非常に適しており、干渉パターン形成における精度と再現性を両立できます。
Skylark 349 NX によるリソグラフィー機能の拡張
Skylark 349 NX は、IZMよる4週間の評価期間中、ロイズ社製の干渉計装置に組み込まれました。この構成では、レーザービームを分割して干渉パターンを作成し、入射角を調整することで干渉パターンの周期を調整します。レーザーの特徴である高い安定性とコヒーレント性を有する光源が、一貫した結果を得るために不可欠でした。
主な成果
- 266nmシステムにより、これまで実現できなかった 650~1000 nm 周期のストラクチャ形成に成功しました。
- センサーやフィルターなど光学用途に不可欠な、フォトニック結晶、回折格子、メタ表面といった構造において、カスタマイズ可能で再現性の高い設計を造形できました。
- レジスト層を最大 1.4µm まで厚くすることができ、レジスト厚の向上に貢献しました。
- 性能向上により、AZ 5214E や AZ MIR 701 などの業界標準レジストを用いた際でも、高アスペクト比で微細な形状を形成できます。
高精度ライングレーティングおよび形状カスタマイズ可能な造形
Skylark 349 NX は、様々な周期とフォトレジストを用いて、高精度ライングレーティングやカスタマイズ形状を造形することで、その汎用性を実証しました。
高解像度ライングレーティング
- 小周期グレーティング:シリコンエッチングに使用される高解像度ハードマスクに最適です。
- 中周期グレーティング:高アスペクト比のパターンを必要とするリソグラフィー設計に適しています。
- 大周期グレーティング:ビームスプリッターや大規模パターニングなどの光学用途に効果的です。

Skylark 349 NX を使用して作成された高アスペクト比構造と複雑なパターン
カスタム機能と設計の柔軟性
- 高アスペクト比の造形は、堅牢性、精度、耐久性に優れたパターンを必要とするアプリケーションにおいて不可欠です。
- スクエアピラーアレイの一貫した造形は、光学または電子アプリケーションにおける高度なリソグラフィ設計に適しています。
- 非常に微細な構造をもつ正弦波グレーティングは、光学、センシング、通信など、幅広いアプリケーションに好適です。
- トレンチとブリッジの幅は、露光時間を調整することで制御できます。
- 傾斜ラインは、サンプルを回転させることで実現できます。
干渉リソグラフィーにおける紫外線DPSSレーザーの用途
Skylark 349 NX UV DPSSレーザーは、卓越した精度、安定性、コヒーレンスを提供し、様々なアプリケーションの進歩に貢献します。
- ナノインプリント・リソグラフィー・マスタ
- 分光測定および通信用 高効率グレーティング
- 高表面反射率ナノパターン
- ラマンスペクトル増幅表面(SERS)の作成
- ビームスプリッター、導波路、メタ表面などの光学系