コラム
2023/11/01
核融合発電の基礎から将来性と課題まで、わかりやすく解説!エネルギーの未来を支える新技術について詳しく知りたい方必見!
目次
核融合発電の基礎からメリット・デメリットまで、わかりやすく解説!エネルギーの未来を支える新技術について詳しく知りたい方必見!
エネルギーの未来を支えるために、核融合発電という新たなエネルギー技術が注目を集めています。核融合発電は、化石燃料を使わずに無限のエネルギー供給を可能にするとされ、2050年のカーボンニュートラルを目指す上で重要な一手となる可能性もあります。
本記事では、核融合発電の基礎からメリット・デメリットまで、わかりやすく解説します。核融合発電によって直面する、技術的・経済的な課題や社会的な影響について考察しますので、新たなエネルギーの時代を迎える核融合発電について、参考にしていただければ幸いです。
1.核融合発電とは
核融合発電は名前のとおり「核融合」を利用した発電で、「核分裂」を利用する原子力発電と比べて放射能が速やかに減衰し廃棄物を減らすことができるため、環境に優しいエネルギー源として期待されています。
また、燃料となる重水素などは水から採取できるため、半永久的なエネルギー供給が可能となります。
核融合発電の実用化には、プラズマの制御やエネルギーの効率的な取り出し方法など、まだまだ多くの技術的な課題が存在します。しかし、多くの研究者や専門家が核融合発電の実現に向けて取り組んでおり、クリーンで持続可能なエネルギー源として期待されています。
1)核融合とは
核融合とは、水素のような軽い原子核同士がくっついて(融合して)、ヘリウムなどのより重い原子核に変わることです。核融合反応では、重水素(D)と三重水素(T)の原子核が融合し、ヘリウムと中性子が生じます。この反応はD-T核融合反応と呼ばれています。
参考:量子科学技術研究開発機構「誰でも分かる核融合のしくみ | 核融合とは?」
2)核融合発電の仕組み
核融合発電は、原子核同士を結合させてエネルギーを生み出し発電する技術です。燃料となる重水素は海水中に豊富に存在しており、低コストで莫大なエネルギーを得ることができます。また、化石燃料を燃やさないため、二酸化炭素(CO2)の排出もありません。
核融合発電では、水素は数千度以上に加熱され、水素原子核の陽子と電子が自由に飛び回る「プラズマ」の状態になります。この高温のプラズマを制御することで、原子核同士が衝突し、核融合反応を起こすことが可能となります。核融合反応によって生じるエネルギーは非常に大きく、大量のエネルギーが放出され発電に利用されるのです。
3)現在の核融合発電の研究状況
現在の核融合発電の研究状況は、国際的な共同プロジェクトである国際熱核融合実験炉(ITER)を中心に進んでいます。ITER(イーター)協定が発効し、ITER機構が設立され、日本を含む多くの国・地域が協力して、核融合の実現を目指しています。
ITERでは、核融合の研究を進めるために、高温・高密度のプラズマを制御することが重要な課題となっています。このため、超伝導技術や高出力レーザーなどの先端技術を活用して、プラズマの制御を実現しようとしています。
現在、南仏でITERの建設は順調に進んでおり、2025年の運転開始(ファーストプラズマ)に向けて準備が進められています。また、実用化に向けた次のステップとして、DEMOと呼ばれる原型炉の建設も計画されています。
核融合発電の研究は、その難しさから時間がかかるものですが、国際的な協力を通じて着実に進んでいます。将来的には、環境に優しいエネルギー供給の1つとして期待されています。
参考:原型炉設計合同特別チーム「核融合研究開発計画と原型炉(DEMO)」
2.核融合発電のメリット
核融合発電のメリットとして、「エネルギー効率の高さ」や「資源の枯渇問題への対策」、「排出物削減による環境負荷の軽減」が挙げられます。これらの特徴から、核融合発電は将来的な持続可能なエネルギー供給元として、大きな期待が寄せられています。
1)エネルギー効率の高さ
核融合発電は、原子核同士を結合させてエネルギーを生み出す技術です。燃料に用いる重水素は海水中に豊富に存在しているため、低コストで莫大なエネルギーを得ることができます。
また、核分裂反応を利用した原子力発電と比較すると、核融合発電はエネルギー効率が非常に高いと言われています。核融合反応によって生み出されるエネルギーは、原子核同士の結合によって放出されるため、非常に大きなエネルギーが得られます。そのため、少量の燃料で多くのエネルギーを生み出すことができるのです。
2)資源の枯渇問題への対策
核融合発電では、前述のように燃料として重水素を使用します。重水素は海水中に豊富に存在しており、その供給はほぼ無限と言えるほどです。一方、現在日本において発電量の多くを占める化石燃料に依存した発電方法では、地球上の資源が枯渇していく可能性があります。核融合発電の利用によって、資源の枯渇問題に対処することが可能になります。
3)排出物削減による環境負荷の軽減
核融合発電は、発電過程でほとんど排出物を生成しません。現在の原子力発電所では、核分裂によって大量の放射性廃棄物が発生しますが、核融合発電ではそのような廃棄物の生成が少なく、また生成されても放射能は速やかに減衰されます。また、二酸化炭素などの温室効果ガスの排出量も極めて少ないため、環境負荷を軽減できます。
3.核融合発電のデメリット
核融合発電は、クリーンで持続可能なエネルギー源として期待されていますが、実現に向けてはいくつかの課題が存在します。以下では、「技術的課題」「コストの問題」「安全性に関する懸念」について解説します。これらの課題を克服し、核融合発電の実用化を進めるためには、技術の進歩や経済的な面での努力が不可欠です。
1)技術的課題
核融合発電の実現には、高温でプラズマを制御し、核融合反応を維持することが必要です。しかし、現在の技術では、高温に耐えられる炉壁の開発や、プラズマの制御技術の向上が課題となっています。高温に連続して耐えられる安全性の高い炉壁の開発は、困難を伴う課題となっています。
2)コストの問題
設備の建設費用などが高額になるため、核融合発電の実用化には、膨大なコストがかかります。現在の技術では、まだコスト面での課題が解決されていないため、実用化には時間と努力が必要とされています。
3)安全性に関する懸念
核融合発電には、放射線やプラズマの制御に関する安全性の問題があります。高温のプラズマや核融合反応による放射線は、人体や環境に対して悪影響を及ぼす可能性があります。
原子力発電と比較した場合、核融合発電は非常に高い安全性を持っています。しかし、完全に放射能がないわけではないため、実際に稼働するためには、地域の反対や建設地域の問題にも配慮する必要があります。
これらの安全性に関する課題を解決するためには、綿密な研究と試験が必要とされています。
4.核融合発電の将来展望
核融合発電の商業化への道のりはまだ長いですが、早期の実現に向けて、技術の進歩や研究施設の活動などたゆまぬ努力が続けられています。エネルギー政策においても、核融合発電が持つ多くのメリットが注目され、重要な役割を果たすことが期待されています。
1)商業化への道のり
現在、核融合発電技術は実用化されるには至っていません。一般的な予測では2030年代から2050年以降になると予想されています。
核融合発電の商業化には、まだ多くの技術的課題が残されています。例えば、高温・高密度のプラズマ制御や三重水素(トリチウム)の供給などが挙げられます。これらの課題を解決するためには、さらなる研究と開発が必要です。
基礎研究の進展により、商用化が視野に入ってきたことが大きな要因となり、さまざまな業界で核融合発電に対する関心が高まり動きが活発化しています。各国政府主導の研究プロジェクトも進行中であり、さらにはスタートアップ企業の参入や開発も相次いでいます。
2)世界の核融合研究施設の紹介
日本では、国際核融合エネルギー研究センター(IFERC)を中心とした研究活動が展開されています。IFERCは、核融合研究の国際共同プロジェクトであり、世界各国の研究者が協力して研究を進めています。特に、JT-60装置における高温高密度プラズマの達成は、世界的な注目を集めました。
参考:量子科学技術研究開発機構「国際核融合エネルギー研究センター」
欧州連合(EU)も核融合研究に力を入れており、前述のITER(国際熱核融合実験炉)と呼ばれる大型実験装置の建設を進めています。ITERは、核融合炉の実現に向けた重要なステップであり、その建設には世界各国が参加しています。2022年に各種施設の建設がスタートしており、核融合炉の実現に向けて大きな前進となるでしょう。
アメリカでは、プリンストンプラズマ物理学研究所(PPPL)など多くの国立研究所が核融合研究に取り組んでいます。また、アメリカはITER計画にも参加しており、国際的な協力も進められています。
中国では、中国原子能科学研究院(CIAE)などで核融合技術の開発やプラズマ物理学の研究に力を入れており、国内外の研究者との共同研究も行っています。中国もITER計画に参加しており、核融合の研究・開発に積極的に取り組んでいます。
その他多くの国々が、核融合技術の研究・開発に取り組み、国際的な連携を進めています。
3)エネルギー政策における役割
核融合発電は、将来のエネルギー政策において重要な役割を果たすことが期待されています。まず、核融合発電は石油や石炭などの化石燃料に頼ることなく、持続可能なエネルギー供給を実現できます。これにより、地球温暖化や環境破壊といった問題を解決する一助となるでしょう。
さらに、核融合発電はエネルギー安全保障にも貢献します。核融合炉は非常に安全性が高く、事故や放射性廃棄物のリスクが少ないとされており、原子力発電所のようなリスクを抱えることなく、安定したエネルギー供給が可能となります。
将来的な展望としては、2030年代には核融合発電が実用化される可能性があります。さらに、2050年以降には広く普及し、持続可能なエネルギー供給の一翼を担うことが期待されています。
技術の進歩や国際的な協力により、核融合発電は夢から現実へと変わっていきます。核融合発電の将来展望は明るいものです。エネルギーの供給安定化や地球環境の保護に向けて、核融合の実用化は重要な一歩となるでしょう。