コラム
2023/02/28
レーザーとは?
レーザーについて知ろう!
レーザーは、医療、通信、建築、工業などといった非常に多くの分野で活用されています。例えば、医療の分野ではレーザーメスなどの医療用具として、通信分野では高速通信で、建築分野や工業分野ではレーザーを用いることで確実な測定も可能になります。また、センサー類、加工などにも使われています。
私たちの身近なものも含めると、とても広い範囲で使われているレーザー。そんなレーザーとは一体何なのか、どのような特性を持ち、どういった用途があるかなどを解説していきます。
レーザーとは?
レーザーは、Light Amplification by Stimulated Emission of Radiation(誘導放出による光増幅放射)の頭文字からとった略語で、光増幅プロセスを通してコヒーレント光ビームを発光する装置です。
気体や液体、固体の中にある電子をエネルギーの高い状態にして、そのエネルギーが光として放出される際に増幅することで作られます。レーザー光は自然界には存在せず「共振器を使って光(電磁波)を増幅して得られる」人工的な光です。
1960年に初めてレーザー発振に成功して以降、ガスレーザー、ファイバーレーザー、固体レーザー、色素レーザー、ダイオードレーザー、エキシマレーザーなど多種多様なレーザーが実現しています。これらのレーザーはどれも、基本となる一連の各種コンポーネントを共有しています。
レーザーを作る原理とは?
レーザー光が作られる流れは、「励起」「自然放出」「誘導放出」「反転分布状態」「増幅」になります。
それぞれを詳しく説明すると、以下になります。
・励起(ポンピング)
外部から光が入射すると、原子中の電子は光を吸収し、最低エネルギーでもっとも安定した状態(基底状態)からより高いエネルギー状態になります。エネルギーが高まると電子は通常の軌道から外側の軌道に移ります。エネルギーの低い位置よりも高い位置に電子がたくさんいる状態(エネルギーが高い状態)を『励起状態』といいます。
・自然放出
上記の励起状態は不安定な状態であり、すぐに安定しようとして低いエネルギー状態に戻ろうとします(遷移)。この戻るときにエネルギー差に相当する光を放出します。この現象を「自然放出」と言います。
・誘導放出
上記の自然放出光が他の励起状態にある原子に入射すると、その原子は自然放出光に刺激されて基底状態に戻ります。このときに発生する光を誘導放出光といい、入射光と同じ向きにエネルギーが2倍になるように増幅されます。これがレーザー光になります。
・反転分布状態
上記の誘導放出によりレーザー光を出すには、高エネルギー状態の電子が低エネルギー状態の電子よりも多くある状態が必要です。このエネルギー準位の高い位置に電子がたくさんいる状態(エネルギーをたくさん貯め込んでいる状態)を「反転分布状態」と言います。
これにより、エネルギーの高い位置に電子がたくさんいるので、電子は大量に落ちることができ、吸収されるよりも誘導放出される光が多くなり、レーザー光を大量に作ることができるようになります。
・増幅
上記の誘導放出されたレーザー光を2枚のミラーで折り返す様に反射させます。反射された光は更なる誘導放出を雪崩(なだれ)式に引き起こし、大量の波長と位相が揃った光が発生します。この事を「増幅」と言います。
誘導放出される光が連鎖的に起こり、波長と位相の揃った光が大量に発生して強力なレーザー光が作られます。
レーザー光の特性とは?
レーザー光は大きく「指向性」「単色性」、「可干渉性」、「集光性(高出力)」の4つの特徴があります。
1.可干渉性(コヒーレンス)
レーザー光は規則正しく振動しています。
波長が揃っており重ね合わせることができる(可干渉性)ため「コヒーレント」な光と言われます。
一方、自然光はこのような性質は持っていないので「インコヒーレント」な光と呼ばれています。
2.指向性
通常の光源から出る光に比べてレーザー光は、ビームが大きく広がらないため、遠くの対象物まで到達
させることができます。ただし、半導体レーザーは除きます。
3.単色性
レーザーは、発光する原子によって決まる特有の波長の光だけを出すことができます。太陽の光のような通常光は複数の色が混ざり合ったものですが、レーザー光は1つの色で他の色は混ざっていません。単一波長の光の集まりなので、プリズムに通しても分解されることもありません。1つの波長の集まりで、かつ強い光なのです。
4.集光性(高出力)
太陽光は光の絞り込みに限度がありますが、レーザー光は金属をも溶かすくらいまでレンズで光を絞ることが可能です。「集光性に優れている」「エネルギー集中度に優れている」とも言われます。
例えば、レーザー加工やレーザーメス・レーザー溶接などはこの性質を利用したものです。レーザー光なら、小さな面積に集めることができるため、高いエネルギー密度を作ることが可能となり、鉄板でも簡単に孔を開けることができます。
まとめると、レーザーとは自然にある光とは異なり、「まっすぐ」で「単色」で「規則正しく」「強いエネルギーを集中できる(小さく絞れる)」人工の光と言えるでしょう。
レーザーの活用・用途について
レーザーは、上記にあげてきたような優れた特性のため、わたしたちの生活のあらゆる場面に関わっている科学技術です。レーザーという『ツール』を使うことで、人間の感覚に頼るしかなかったことが、簡単に正確にできるようになっています。
医療分野でのレーザーの活用
レーザーの良好な単色性、視準性、コヒーレンス性といった特徴は、疾患の診断、観察、治療などに非常に適しています。また、レーザー診療技術は、従来の診療方法と比べて非接触・最小侵襲の面でも非常に優れており、臨床治療には欠かせないキー技術と効果的な手段となっています。
光線力学的療法、エキシマレーザー角膜形成術、レーザー砕石術、低出力レーザー治療、レーザーを用いた歯科診断および治療、レーザー血管形成術、レーザーを用いた内視鏡手術などで活用されています。
工業分野でのレーザーの活用
工業分野においてレーザーは、微細な変位を測定するための測長器での活用や、傷や部品の有無を検出するセンサー類で精密かつ高速な測定に利用されています。また、切断、マーキング、穴あけ、溶接などの各種加工にもレーザーは用いられます。
自動車部品の溶接では、ボディー鋼板やギアのほか、電子基板やセンサー類にも適用されています。
情報・家電分野でのレーザーの活用
情報・家電分野においてレーザーは、PC周りの機器だけでも、レーザープリンター、レーザーマウス、光ストレージ(CD、 DVD、 BD/ブルーレイ ディスク)、レーザーディスプレイ、レーザーキーボードなどに利用されています。
さらには光メモリーや光CPU、バーコードリーダーまで含め、従来のあらゆる機器・部品がレーザーに代替できています。
また、レーザー光は電磁波なので通信手段として用いることができます。近距離では光ピックアップ、遠距離ではレーダーや航空機、衛星通信などに使われています。レーザー光は鋭いビーム形状で伝搬するため、特定の受信者のみに信号を伝送でき、電波通信に比べると秘匿性が高い方式であると言えます。
他にも、レーザーの技術は科学分野、娯楽分野、建築分野、軍事分野など多くの分野で利用、研究されています。